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リピーター率が8割を超える、パンチョのブランド戦略とは

「リピーター率が8割を超えるパンチョは、市場優位性が高く、飲食業界では唯一無二の存在なんです」

こう語るのは、ナポリタン専門店『スパゲッティーのパンチョ』を牽引する営業部部長の野尻圭介。商品企画やマーケティングなど、ブランドの未来をつくる役割を担っています。

現在は “パンチョ100店舗構想” のもと、FC展開を含めた出店を進めており、2016年から2020年の4年間で16店舗を出店しました。

上記の成長率は、32ブランド展開するファイブグループのなかでも群を抜いており、同社の成長を支えています。今回は普段は見えない、パンチョのブランド戦略の裏側を語ってもらいました。

▼野尻圭介/パンチョ営業部部長
16歳で飲食店のアルバイトを経験、以来30年以上飲食業界に携わる。26歳で『牛角』などを運営する株式会社レインズインターナショナルへ転職し、32歳にしてブランド作りを専門にするマーケティング部部長に就任。その後独立し、渋谷で居酒屋を経営。5店舗を6期経営するも「これからは専門店が求められる時代になる」と考え、同社を譲渡。2016年4月に株式会社ファイブグループへ入社。


ブランド戦略3つのポイント

──ファイブグループが運営する32ブランドのなかでも、パンチョはリピーター率が高いことが特徴です。その理由は何でしょうか?

いくつか理由があります。

一言で表すと、「ナポリタン=パンチョ」という第一想起を獲得できていることが大きいですね。ブランド戦略としては3つのポイントがありました。

まずは、ナポリタンの専門店がこれまでなかったことに注目し、市場で先にシェアを取る戦略を打ち出したこと。ニッチな分野なので大手企業の参入はまず考えられません。

かといって個人店が当社と同じ味やサービス提供をしようとすると、原価が合わず営業が続かなくなります。

2つ目は、圧倒的な美味しさの提供です。これは単に商品クオリティの話だけではなく、戦略的な狙いもありました。

ナポリタンの味は比較対象がなく、せいぜいお弁当の添え物や冷凍食品、家庭での味ぐらいしかありません。つまり期待水準が低いんです。

もしこれがラーメンだったらお客様の期待が高いなか、それをさらに超える必要があります。パスタも美味しいお店が世の中にあふれています。でも、ナポリタンにはそれがない。

定番メニューにもかかわらず、美味しいと感じる体験を得る機会が少ないのです

そのなかでパンチョは、他社がマネできない味を提供しています。

初めて食べるお客様は首をかしげるんですね、「ナポリタンってこんな味だったっけ?」と。そして思うんです。「ナポリタンってうまい!」って。

3つ目のポイントは、「驚き」があることです

パンチョは2009年に渋谷で第一号店が誕生。当時は珍しかった大盛り無料のサービスがあったり、一足早く券売機を導入していたりしました。

ほかにも、そもそもの量が多かったり、タバスコのサイズが500mlのペットボトルよりも大きかったり、粉チーズがかけ放題だったり…。

最近では、「こんなにできたてで熱いナポリタン、初めて食べたよ」というお客様の声もありましたね(笑)。

一見、思い付きでやっていると思われるかもしれません。もちろんお客様に喜んでいただくことが大前提ですが、その上で徹底的に「驚き」にこだわることで、口コミや紹介、メディア露出などの相乗効果も狙っています。

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プロモーション戦略の裏側

──ブランドの認知拡大に向けて取り組んでいることはありますか?

新規のお客様の来店や、売上、リピート率を上げるための施策を年に2回行っています。

ですが、お客様への感謝還元セールのような、単なる割引キャンペーンで終始してしまうことを私たちはしません。

そこで考案したのが「パンチョの日」と「ミートの日」です。

──具体的にどういったキャンペーンなのでしょうか?

内容としては、来店されたお客様に無料券を配るのが「パンチョの日」です。シンプルに売上が伸びます。

一方、500円という割引価格でミートソースのスパゲッティーを食べられるのが「ミートの日」です。提供メニューを一つに絞るためオペレーションも軽くなり回転率が上がります。

──他社のキャンペーンとの違いは何でしょうか?

キャンペーンの成果だけでなく、どうすれば仕事を楽しめるかマネジメントの視点で企画していることが最大の違いだと考えています。

キャンペーン自体は「売上」や「客数」を上げるための取り組みですが、それは主体的にかかわるスタッフのみんながいてこそ。前年の記録をどうすれば塗り替えられるか、現場主導で楽しみながら企画を進めてもらっています。

経営陣が「今年の記録更新はさすがにムリだろう」と考えていても、毎年その予想をはるかに超える数字が生まれるのです。

現在では、お客様だけでなくスタッフもお祭りのように一緒に楽しめる大好評のイベントになっています。

──プロモーション活動では、SNSやメディアの活用も目立ちますね。

SNSのなかの人「パンチョ大王」としてTwitterも運用しています。

2020年の2月から始めて、同年12月時点でフォロワー数は1788人を突破しました。お客様の傾向分析をしたところ、SNSとの相性が良いことがわかりマーケティング施策としてスタートしたんです。

また、テレビやYouTubeとの親和性も高く、特に大食いコンテンツなどは相性抜群ですね。そういった強みを活かしたプロモーション戦略をしかけています。

パンチョ事業に携わるなかで苦労したこと

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──ここまでとても順調なお話でしたが、逆に苦労したことはありましたか?

入社直後に任されたのが「パンチョのフランチャイズ化(以下、FC)」でした。

2020年の12月時点でFC含め22店舗展開していますが、私が入社した2016年時点では直営6~7店舗しかありませんでした。

当時はFC展開の経験やスキルを持った人材がいなかったため、思っていた以上に苦戦しましたね。

──どういった点が大変だったのでしょうか?

予想以上にコストがかかるんです。ビジネスとして成立させるためには、電気やガス、水道代といった必要経費との採算が合うように最適化させる必要がありました。

また、誰でも美味しい料理を作れるようにするためのオペレーション設計も重要でした。

こういった課題をクリアしなければ、FC化は難しいと感じましたね。

──どのように解決されたのでしょうか?

初期はコストとオペレーションの課題をすぐに解決することが難しく、この大変さを超えられる「やりがい」「楽しさ」を大切にしました。

当時のスタッフはもちろん、FCオーナーさん達が持っている「パンチョ愛」に助けられたとも言えます。事実、パンチョは全32ブランドのなかでもっとも離職率が低く、働くスタッフからも愛されているブランドなんです。

ですが今後はそれだけではいけないと考え、調理機などを含めた設備面での充実を進めています。既存のスタッフからは「味が変わってしまうのでは?」という不安や心配の声もあるため、コミュニケーションも課題となるでしょう。

また、FC展開を加速させる上では、直営店とFC店のマインドイズムの違いを良い意味で均一化していくことも重要です。

直営店の方が想いが強くて良いかというと、一概にそうとは言えません。熱狂的な「パンチョ愛」ゆえに、リピーター優先で対応しすぎてしまうケースもあるからです。

業態成長をさせていく上で、常にジレンマは抱えていますが、それをどう乗り越えていくか、頭に汗をかくことが自分の役割だと思っています。

パンチョが目指す未来

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──そこまでして店舗を増やすのはなぜでしょうか?

私たちは、「改めてナポリタンはうまいと言わせる」というミッションを掲げているからです。

ナポリタンはパスタの人気ランキングで、常に2位や3位を獲得している定番料理。まさに日本人が生み出した食文化と言えます。

だからこそ、本当に美味しいナポリタンを届けたいんです。

そこで必要になるのが、

1. シェア(横に広げる)
2. エンゲージメント(縦に深める)

という2軸です。

──それらの軸はどのように展開していくのでしょうか?

「シェア(横に広げる)」については、“パンチョ100店舗構想”を掲げていて、そのなかにFC化などの戦略も含まれます。

一方で店舗数にだけこだわるのではなく、レシピと食材のセットをライセンスという形で提供し、シェアを広げていく構想もあります。

そうすると、スキー場やゴルフ場、高速道路のサービスエリアなどでもパンチョのナポリタンが食べられるようになるわけです。

「エンゲージメント(縦に深める)」ではお客様を含め、社員やアルバイトのファン化の取り組みを進めます。冒頭にお伝えした、立場に関わらず、パンチョを愛するすべてのナポリストでつくるイベントの企画などが該当するでしょう。

──まさに、パンチョが目指す未来像がその先にあるわけですね。

ブランド戦略についての話でありながら、ひも解いていけば、その根底にはシンプルに「改めてナポリタンはうまいと言わせたい」という動機があるわけです。

その一つひとつの行動が重なり合い、本当の意味でナポリタンは「日本の食文化」として定着する。そう考えています。

私たちは、ナポリタンを主役に上げる使命がある。そのためにも、ナポリタンをこよなく愛する “ナポリスト” を増やしていく。遠回りのようで、結果的にこれが最短の道だと考えています。

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