【5IVE PEOPLE】福田幸洋/事業部長・ブランドディレクター、北真志/店長
僕らが提供できることは、活力を与えること。 街のチャージスポット『ステーキロッヂ』
2017年9月、渋谷道玄坂に1号店をオープンした『ステーキロッヂ』は、ファイブグループが手がける新業態の飲食ブランドだ。コロナ禍でも営業を休むことなく、着実にお客様を増やし、渋谷店のライン友だち登録は、4万3000人(2022年7月時点)を突破。現在、池袋店、市川店、渋谷宇田川店を加え、4店舗を展開している。『ステーキロッヂ』のブランドコンセプトは、都会の“肉チャージスポット”になること。元気が足りていない、エネルギーを欲しているお客さんに、ステーキで、活力を注入して笑顔で帰ってもらう。そのコンセプトに共感する店長やスタッフが、目指すビジョンを実現するために、主体的に考え、表現することで、『ステーキロッヂ』というブランドがますます強化され、店舗の枠を越えた一体感も生まれている。『ステーキロッヂ』はどのようにして生まれたのか、そして今後目指していることは?
(※本記事の情報は2020年取材時のものです)
ステーキは人に活力を与える料理。そこからコンセプトを磨いていった。
『ステーキロッヂ』のブランドディレクター兼事業部長福田幸洋は、『パンチョ』で複数店の店長と統括マネジャーを経験後、新しい事業部として【価値創り研究所】を社内で立ち上げ、ビーフストロガノフ専門店や洋食専門店、ヴァーチャルレストラン事業など新業態や新事業の開発に携わってきた。ステーキブランドは福田の念願がかなって取り組むことになった新業態。ライバルとなる飲食店の視察や研究をしていくなかで、ファイブグループとしてステーキ店をやる理由は何かを考え続けた。
福田:「『ステーキロッヂ』はオープン当初、他店と差別化できるような明確なミッションやビジョンはありませんでした。売上げは最初から順調だったけれど、そのままでは、今までにない新しい価値を生み出すことにはつながりません。僕らだから、ファイブグループだからこそ、できることはなんだろう? 渋谷店のカウンターに座り、外を行き交う人々を眺めながら、ずっと考えていました。すると、人々の顔が見えないことに気づきます。なぜか? みんな下を向いて歩いているからです。“あれ、今の日本って元気がない?”ふと思ったときに、僕らが提供できることは、ステーキという活力を与える食べ物を通して、みんなを元気にすることだ!と気づいたんです」
目的が決まったことで、目標も、行動も、結果も変わる。
福田は『ステーキロッヂ』のビジョンを、“地域から必要とされるチャージスポットになること”と定め、ブランドが目指す世界を言葉にして、メンバーに共有していく。
福田:「僕らが提供しているステーキの価値は、美味しさも、コスパのよさもあるけど、それだけじゃない。お客さんが来店して、ステーキを食べて、活力をチャージして、笑顔になって帰っていく。だから、目指すことは“満足度日本一のステーキ店”になることだと決めました。そうなれなかったらミッション失敗。わかりやすいですよね。じゃあ、ブランドが目指す世界に向かって、どういう店舗をつくっていくのか。チャージスポットとして、お客さんを元気にするのだから、まずお店で働くスタッフも元気じゃないといけないよね、と。表現は人それぞれで構わないけれど、なんのために働くのか、目的が明確になったことで、達成すべき目標が変わりました。目標が変われば、行動が変わり、結果が変わります。そしてプロセスを通じて、また新たな目標が生まれます。これこそグッドスパライルだと僕は信じていて、そこから生まれていくWin-Winの関係性。それが、世の中に価値を創るということだと思っています」
満足度日本一のお店を目指して、お客さんの声を聞き、改善し続ける。
ブランドが表現したいことが伝わっているかどうかは、口コミで。お客さんが満足しているかどうかはアンケートで見える、と福田は言う。
福田:「お客さんとWin-Winの関係を築くには、アンケートで生の声を聞いていくしかありません。新しいサービスの開発は、市場を見てひらめきからはじめることと、お客さんの声から新しいニーズを開拓することの2通りがありますが、いずれにしてもお客さんの反応を見て、サービスを磨き続けることが、満足度を高めるために私たちがやっていくべきことです。『ステーキロッヂ』で、牛肉だけではなく、鶏肉、ジンギスカン、カンガルーといったメニューを用意していることも、肉とブロッコリーだけのメニューをマッチョな人に向けて提案するような企画も、お店側の独りよがりなサービスじゃなくて、そこにニーズがあるから提供していること。はじまりはひらめきであっても、続いていくことには背景や理由がちゃんとあります。『ステーキロッヂ』の強みは、お客さんの声を聞いて、常に改善し続けていくこと。それを主体的にできる店長やスタッフの集団であること、だと思っています」
理念を体現するために、全員が、主体的にできることを考える。
2018年春、オープンから約半年後『ステーキロッヂ』のコンセプトが明確化し、店舗で働くスタッフに共有されていった。当時アルバイトとして渋谷店で勤務しており、2021年に社員となり同年9月から渋谷店店長を任されている北真志は、コンセプトを聞いて深く共感したことを覚えている。
北:「福田さんのメッセージを聞いて、ブランドとして目指すことがハッキリしました。共感するメンバーしかいなかった。僕らとしては、その理念を店舗でどう体現していくか、チャージスポットとは何か、満足度日本一とは何かをしっかり腹落ちさせて、行動したいと思いました。飲食店で店長をする人は、自分の考えを店舗で押しつけがちなのですが、そうではなくブランドの価値を考えて、それを最大化するために何ができるか。お客さんに“また来たい!”と思ってもらうために『ステーキロッヂ』としてどう表現していくかを、働く1人ひとりが主体的に考えることが大事だと思いました。接客はもちろん、アルバイトの育成についても、常に意識して取り組んでいます」
お客さんに元気を与えるチャージスポットという可能性を広げたい。
北店長にとって、“チャージスポットになる”という理念は、何かを考えるときの大きな指針となっている。
北:「『ステーキロッヂ』には、“気さく”“フレンドリー”といったいくつかの基本サービス方針があるのですが、どう表現するかはスタッフ自身に委ねられます。こうして欲しいではなく、どう思うかを自分で考えて実行してもらう。主体的に行動した結果、就活で自信を持って話せるような経験をすることも、市場価値のある人間にもなれる。やりたいことと、やるべきことをうまくつなぎ合わせてWin-Winの関係をつくっていく。チャージスポットは、お客さんを元気にする場所でもあり、働く人を元気にする場所でもあります」
北:「私自身のことでいうと、続けてきた役者業の経験を活かして、エンタメをもっとサービスに取り入れたい想いをもっています。最近、ユーチュー部という動画制作を行う部活動を社内ではじめました。店舗紹介、接客マニュアル、販促ツールなど、楽しい動画を社内制作できるようにして、そこからフェスのような企画にもつなげられたらいいなと。それもまた、お客さんを元気にする“チャージスポット”をつくる可能性のひとつかなと思っています」
30店舗を当面の目標に、地域に本当に必要とされるお店をつくっていく。
『ステーキロッヂ』は2025年に直営30店舗を当面の目標に設定している。しかしただ店舗数を増やすことには意味がないと福田は言う。
福田:「大事なことは、地域で本当に必要とされるお店になるということ。ただ店舗数だけ拡大しても、そこがお客さんにとっても、働く人にとっても、楽しいお店じゃなければ意味がありません。僕の中で理想としていることは、“なんで働くのか?”という質問に、うちで働くと気づくことができるようになること。お客さんに喜ばれることで、はじめて働く意味が見つかります。仕事ってどんな価値があるのか。そこに自然と気づけるようなお店にしたい。『ステーキロッヂ』の理念を体現しているスタッフが揃っていて、地域のお客さんに本当に喜んでもらえるお店が30店舗あるなら、そこには大きな価値があります」
福田:「個人的には、100年後、200年後に、理想の世界になっているために、今はじめたほうがいいことをして、次の世代にバトンを渡していくようなことをしていきたい。人と人、人と社会、社会と国、国と地球。全部がWin-Winの関係性でつながっていくことが、持続可能な世界につながると思っています。そのひとつとして、人に活力を与えるチャージスポットの可能性を広げたい。壮大かもしれないですが、理想は大きく掲げていきたいですね」